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台湾の民族問題と台湾のマルクス主義者の任務

2022年夏に行われたアメリカ合衆国連邦議会議長ナンシー・ペロシの台湾訪問は、台湾の民族問題を世界政治の最前面に押し出した。台湾は事実上一個の独立した国家であるが、一貫して中華人民共和国政府は台湾を自国領土の不可分の一部であると主張して来た。他方、合衆国政府は数十年に亘り、台湾問題に関して意図的な曖昧戦略を維持して来た。ペロシの訪台は、この微妙な均衡に対する更なる一撃であり、均衡が崩壊した場合、東アジア地域全体の安定を脅かし得る契機となり得る。

本稿は六か月前に執筆された文書を、最近の情勢に鑑み若干修正したものであり、台湾の民族問題を理解しようとするマルクス主義者に対して、情勢の力学とそこから導かれる課題を提示する事を目的とする。

ペロシは電撃訪問の途上、台湾に対する「鉄壁の」支援を強調し、合衆国が「民主主義を擁護する」決意を有すると表明した。しかし、彼女が台湾の「民主主義」や「人権」の防衛を口にする時、それは台湾国民の民主的な権利そのものへの関心から出発しているのではない。それは、世界情勢における最大の競争相手たる中国に対する、米帝国主義の代弁者が発する隠微な威嚇に他ならない。

この目的の為に、合衆国と台湾島内のその走狗は、台湾民族主義の炎を煽り立てて来た。対中関係は台湾政治の決定的論点となり、その核心に位置するのが、国家の法的地位の問題である。

すなわち、台湾の運命は如何にあるべきか。正式に独立を宣言し、他国との公式な外交関係を樹立し、国際連合等の国際機関に加盟すべきなのか。それとも、中華人民共和国の直接的な支配下にある一地域として「統一」される運命にあるのか。この数年、島内のブルジョア諸勢力は、この二つの選択肢を巡って、益々鋭く対立して来た。

しかし、マルクス主義者の立場からすれば、これは労働者と貧困層にとって虚偽の二者択一である。我々は、米帝国主義と資本主義の中国と言う、いずれも反動的である二つの陣営のいずれにも与する事を拒否する。両者のいずれも、真の前進の道を提供し得ないからである。

資本主義の枠内において、台湾の民族問題は極めて反動的な仕方でしか「解決(!)」され得ない。その真の解決は、中国及び東アジアにおける革命の展望と切り離し得ないのであり、マルクス主義者、労働者、青年は、その性格と展開に細心の注意を払わなければならない。

米帝国主義

台湾の民族問題は、それ自身固有の力学を有するとはいえ、今日の資本主義世界において台湾が担う役割は、依然として米中対立により大きく規定されている。

近年における緊張の激化、とりわけペロシ訪台は、オバマからトランプ、バイデンに至るまで一枚岩となったアメリカ統治階級が、中国を米帝国主義の覇権に対する最大の潜在的脅威と見做している事の延長線上に位置している。いわゆる「アジアへの軸足移動(リバランス)」は、アジアの国々を次々と米中対立の戦場へと変貌させる政策である。その文脈において、台湾の民族問題は二大国間矛盾の尖鋭化を反映する新たな重要性を獲得した。

「台湾の民主主義の防衛」と称しつつ、米帝国主義は台湾に対する軍事的・外交的・経済的介入を徐々に強化して来た。例えば2019年から2020年にかけて、トランプ政権は108両の最新型エイブラムス戦車を含む150億米ドル超の武器売却を承認し、更に1億8000万米ドル相当の魚雷を供給した。バイデン政権もまた、この流れを継続する意図を明らかにしている。既に合衆国特殊部隊が「訓練任務」の名目で台湾に駐在している事も暴露された。公式には「防御的兵器」と説明されるが、仮に中国がキューバやメキシコの軍隊を武装・訓練し始めた場合、合衆国は如何なる反応を示すであろうか。ウクライナ政権との関係と同様、米帝国主義は台湾を対中対立における前哨基地と見做しているのである。

数十年にわたり、合衆国は台湾と非公式関係を維持しつつも、台湾を中国から切り離された主権国家であると公式に認める事を避けて来た。合衆国大使館ではなく「米国在台協会」が設置され、最高レベルでの公然たる直接接触は控えられて来た。しかし2016年、ドナルド・トランプは、台湾総統蔡英文との電話会談に応じ、1979年以来初となる「公式」通話を行い、この伝統を破った。以来、台湾とその半導体工場を視察する合衆国議会代表団の訪台は増加し続けている。

ペロシの訪台は、その中でも最も露骨な挑発行為であり、米議会共和党勢力から喝采を浴びた。

合衆国は依然として「一つの中国」政策を表向き維持し、台湾の法理上の独立を公然と支持する事は避けているものの、従前の高度に精緻化された「戦略的曖昧さ」から逸脱している事は明白である。2021年十一月の記者会見で、バイデンは台湾は「独立している」と口走り、直後に「独立を奨励している訳ではない」と弁明しつつ、「台湾自身が決定する事柄」であると述べた。これは台湾独立に対する同情的な姿勢を暗に示すものであった。

この種の発言は、米帝国主義を台湾国民の民主的な権利と願望を擁護する勢力として演出する事を狙っている。しかし、バイデン政権が、同様に長年に亘り帝国主義的抑圧の犠牲となって来たパレスチナ人やクルド人等の小さな民族に対して、同様の「自己決定権」を認めていない事は明白である。実際、サウジアラビアやイスラエル等の親米的な独裁国家による抑圧に対しては「民主主義の防衛」のような言説は一切用いられないにも拘わらず、台湾に関してのみ合衆国の意図が善意に基づくと信じよというのである。

歴史が示す通り、ワシントンが「民主主義の防衛」や「人権」あるいは民族の「自己決定権」を口にする時、必ずや重大な裏切りが準備されている。小国は常に大国間抗争における「小銭」として扱われる。同じ大国が、ある時は自己決定権を唱えながら、状況次第ではそれらの民族を躊躇無く見捨て、蹂躙させるのである。

米帝国主義の利害

米帝国主義の行動は「台湾の民主主義の防衛」とは無縁である。それは、世界覇権に対する将来的脅威と見做す中国を弱体化させる為の、露骨に利己的な措置である。合衆国は台湾を、地政学的に中国を包囲する道具として捉えている。これは軍事的にも経済・通商面でも極めて重要である。現状、中国貿易の大部分はマラッカ海峡を通過しており、そこは米軍によって容易に封鎖し得る要衝である。仮に中国が台湾を支配すれば、東中国海(琉球海、沖縄海)・西太平洋の重要な海上通路へのアクセスを確保し、合衆国による遮断の可能性を大きく減殺し得る。

台湾は世界経済における重要な結節点であり、中国経済との緊密な統合を通じて、中国に対する圧力手段となっている。とりわけ、世界最大の半導体受託生産企業であるTSMCが存在し、中国製品に組み込まれる膨大な量のマイクロチップの主要供給源となっている。半導体分野は、中国国産産業が依然として西側に立ち遅れている戦略的領域であり、米国等による制裁に対して脆弱な分野である。合衆国は既にTSMCに対し、中国企業向け数十億米ドル規模の受注を放棄する事を強要しており、中国経済の発展を抑制する事を狙って次々と新たな禁輸・規制を導入している。

現時点で合衆国は、台湾に正式に独立を宣言させる意図を有していない。それが中国との軍事衝突を誘発し、自ら望まぬ戦争に巻き込まれ得る事を認識しているからである。しかし、対中貿易戦争や「デカップリング」圧力、台湾民族主義への支援、ペロシ訪台の如き無謀な挑発等、米帝国主義の益々攻撃的な態度は、数十年に亘り台湾海峡の安定を支えて来た微妙な均衡を不安定化させている。

中国

一方、中国の国家主席である習近平は台湾における「分裂主義」に対する非難の口調を強め、「祖国統一は必ず実現されなければならない」と繰り返し強調している。その意図の深刻さを誇示し、合衆国に対しても示威する為、中国軍は台湾周辺海空域において定期的に軍事演習を実施している。

こうした行動の相当部分は、中国国内で高まりつつある階級的憤激を逸らし、抑え込む為に、排外主義的な国民的熱狂を煽り立てる事を目的としている。しかし長期的には、中国の支配階級は世界政治における中国の地位拡大の為に、台湾支配を不可欠の要因と見做している。

かつて東アジアにおける圧倒的軍事・外交・経済大国であったのは米帝国主義であったが、過去数十年に亘る中国資本主義の急速な発展の結果、状況は一変した。中国は既に世界第2位の経済大国となり、強大な軍隊を整備した。東アジアにおいて中国は今日、最大の地域大国となり、将来、世界的帝国主義勢力へと飛躍する野心を形成しつつある。

中国の支配階級は、合衆国がかつて世界大国へ成長する為にカリブ海支配を不可欠とした如く、世界的地位を獲得する為には東中国海(琉球海、沖縄海)・南中国海の制海権・制空権を確保しなければならないと考えている。その際、台湾は中国の経済的・軍事的包囲を突破する鍵と見做されている。

米帝国主義の相対的衰退と中国資本主義の台頭は、東アジア全域において両大国間の緊張を高めている。将来、米帝国主義が台湾に正式な独立宣言等を促し、それが中国の軍事侵攻を誘発する可能性は否定し得ない。それは意図的に中国を泥沼に引きずり込み、長期的消耗を狙う戦略として採用され得るし、台湾ナショナリズムを扇動する過程で意図せざる結果として生じる可能性もある。その種の事態は、極めて反動的性格を持ち、地域全体を不安定化させ得る軍事衝突を引き起こし得る。

現時点では、米中いずれの支配階級も、過去40年に亘る台湾海峡の相対的安定を支えて来た現状を根底から覆す事を望んでいない。しかし、両者の利害は益々鋭く衝突している。この衝突は、台湾支配階級内部にも反映され、台湾ブルジョアジーは、米中いずれかへの傾斜を伴う二大派閥へと分裂しつつある。

中国と米国との間に挟まれた台湾は、次第に緩衝地帯、両大国対立の前線へと変貌しつつある。「民主主義の防衛」を唱える西側諸国の言辞は、米帝国主義の略奪的利害を覆い隠す煙幕に過ぎない。同様に、習近平が強調する「中華民族の利益」も、中国資本家階級と国家官僚機構の利害を隠蔽する仮面でしかない。

台湾民族問題の歴史的背景

台湾は、歴史的に複数の大国の交差点に位置する小さな周辺島嶼として、長年に亘る植民地支配と抑圧を経験して来た。約4,000年前に南島系諸民族が最初に定住し、多様な文化と社会を形成した。18〜19世紀に至ると、主として中国南部の貧しい農民が大量に移住し、土地を求めて原住民を山地へと暴力的に追いやり、伝統的な中国の農村的生産関係に基づく農業経営を展開した。しかし、漢族が人口の多数派となった後も、台湾は中華帝国の周縁に留まり、中原から半ば放置されつつ、オランダ、スペイン、日本の海賊等の侵入と支配の試みの舞台となった。1895年から第二次世界大戦終結までは、日本帝国主義による植民地支配下に置かれた。この長い外国支配の歴史は、抑圧された台湾国民の間に根強い反植民地主義感情を育んだ。

戦後、台湾は反動的な中国国民党(国民党、KMT)政権の支配下に委ねられた。当初、多くの台湾人は日本語や台湾語(閩南語)を日常語として用いており、国語(北京語)の習得を行う事になった。

しかし国民党政権が統治体制を確立する以前、台湾の大衆は活発な民主化運動や労働組合結成運動を展開した。ところが国民党はこれらを速やかに禁止し、台湾人は「日本帝国主義によって奴隷化された存在」であるから、国民党の漢民族排外主義的文化要求に順応し、その基準に従って「中国人」としての新たなアイデンティティを獲得する事を通じて、初めて平等な市民権を「獲得し得る」と説教した。台湾語(閩南語)を話す事は罰せられ、台湾固有の風俗や慣習は抑圧された。原住民族もまた中国風の姓名を採用する事を強要され、自らの本来の姓名を名乗る権利や他の諸権利を放棄させられ、その特権は国民党の官僚とその取り巻きに譲渡された。この漢民族排外主義的・植民地主義的態度は、やがて1947年の二月蜂起(所謂二二八事件)を誘発し、それは国民党による凄惨な弾圧を招いた。

同時期、中国内地でも国民党に対する革命が進行していた。ここで中国革命の性格について詳細に論ずる紙幅は無いが、毛沢東とその農民軍の攻勢は古い支配体制を崩壊させ、計画経済に基づく歪曲した労働者国家を樹立した。国民党を指導する反革命的ブルジョアジーとかつての中国の国家機構の残滓は、台湾を最後の避難先として逃亡した。

台湾に逃れた国民党は、米帝国主義の支援を受けつつ、残忍な独裁体制を確立し、依然として中国内地に対する主権を主張し続けた。その為、台湾の国家装置は今日に至るまで「中華民国」と称されている。これは、国民党と結託した旧中国の支配階級が、内地「奪回」の帝国主義的野望を保持していた歴史的経緯を如実に示している。時間と共に、国民党系ブルジョアジーと戦前から台湾に根を下ろしていた在来エリートは融合し、今日我々が目にする台湾支配階級を形成した。その支配を維持する基本的道具こそ、中国内地から持ち込まれた中華民国の国家装置である。

この点こそ、今日台湾に存在するものの本質を理解する上で最重要の要素である。台湾における資本主義は、完全に独自の武装した人員、即ち軍隊・警察・司法・刑務所制度を有し、台湾ブルジョアジーが本島及び附属諸島(澎湖、金門、馬祖、蘭嶼、緑島及び南中国海の諸小島)を完全に支配している。従って、台湾はどんな公式の名称を採用しようとも、既に完全に独立した資本主義に基づく民主主義国家である。この事実を曖昧にする一切の議論は、問題を誤魔化すだけである。

中国覇権主義への反対

中国と台湾の国民の間には、多くの文化的共通性が存在するものの、長期に亘る政治的分離は、独自の歴史と文化を有する「台湾民族」の形成を促した。

数十年前まで、台湾国民の間では中国との「統一」支持の世論が相当に存在し、概ね三分の一の人々がその方向を志向していた。多くの台湾人は自らを「台湾人」であると同時に「中国人」であると認識していた。約30年前の世論調査によれば、自身を「台湾人かつ中国人」と見做す者は46.4%、「中国人のみ」とする者は25.5%、「台湾人のみ」とする者は17.6%であった。然るに現在では、これらの数字は劇的に変化し、自身を純粋な「台湾人」とする者は67%に達し、「中国人のみ」をアイデンティティとする者は2.4%に過ぎない。

台湾民族の形成は、1949年以降長期に亘って続いた国民党独裁への憎悪とも密接に結び付いている。1990年代まで、国民党政権と中華民国の国家装置は、漢民族排外主義に基づく残虐な独裁体制を維持して来た。

中国内地から逃亡して来た中国の資本家の文化・言語・慣習は、台湾において唯一正統な文化とされ、台湾現地人の文化と歴史は「奴隷的」で劣等なものと見下されていた。

この抑圧に対する反発の下、諸階級の活動家から成る広範な運動が形成され、その共通目標は国民党による独裁政権の打倒であった。これが所謂「台湾独立運動」であり、実質的には台湾民族主義と同義である。台湾独立運動の共通分母は、「中華民国」の代わりに「台湾」と称するだけの資本主義国家を樹立する事であった。

1980〜90年代には、国民党と漢民族排外主義に対する民主化闘争の波が幾度も高揚した。しかし、革命的労働者政党の不在の下、その指導部は台湾独立運動の中にあった知識人・弁護士・地方有力者等に掌握され、彼らはやがて民主進歩党(民進党、DPP)を形成した。その結果、民主化闘争は混乱した形で「独立闘争」と結び付けられた。ここで言う「独立」とは、旧国民党国家たる中華民国からの、ひいてはその中国内地「再統一」野望からの政治的分離を意味する。

これらの闘争は最終的に国民党に広範な政治改革を認めさせたが、民進党指導部は台湾資本主義打倒という展望と綱領を欠いていた為、結局国民党との協調路線へと収斂した。その結果、中華民国の国家装置は温存され、その政治形態のみがボナパルティズム的独裁からブルジョア民主主義へと変化したに過ぎなかった。以後、国民党と民進党が政権を争う二大政党制が確立し、国民党は中国共産党政権との「統一」志向を訴える一方、民進党は曖昧な「独立志向」を掲げて大衆支持を獲得する事を目指した。

90年代の闘争は、台湾大衆に一定の民主的諸権利を獲得させたが、中国内地は依然として一党独裁のままであり、同時に資本主義へと転換した。この状況は、労働運動の指導者である故・曾茂興が指摘した如く、「一つの国に二つの制度」ではなく「二つの国に一つの制度」という逆説を生み出した。即ち、台湾と中国はどちらも資本主義体制でありながら、一方は形式的な民主制、他方は専制体制という違いを有したのである。ここに、中国との統一に対する台湾国民の意欲を削ぐ一因があった。どちらも資本主義ならば、統一に何の価値があるだろうか?加えて、この頃から中国共産党政権は、台湾が最終的に統一を拒否した場合には軍事力を行使し得ると公然と台湾を脅迫するようになったのである。

香港2019年運動:転機

世論の最大の転換点は近年、特に2019年夏に香港で勃発した大規模民主化運動において現れた。百万人を超える香港市民が街頭に溢れ、ゼネストの可能性が議論されたこの運動は、中国共産党政権を震撼させた。何よりも習近平政権が恐れたのは、香港革命が中国内地の労働者階級の高まりつつある不満と結び付く事であった。実際、多くの中国内地の労働者と急進的青年は香港運動に共感を抱いた。

当時、台湾の総統選挙キャンペーンは真っ最中で、現職の民進党指導者・蔡英文は屈辱的な敗北を喫する見通しであった。数年にわたる緊縮財政と裏切りを主導した民進党は、世論調査で支持率を急落させていた。一方、強硬な親中派である国民党候補の韓光裕は、民進党の行き過ぎた政策を標的とした扇動的で反体制的なレトリックを掲げた選挙運動を基盤に、支持率を急上昇させていた。

国民党に大きく後れを取っていた蔡英文と民進党は、香港での出来事を機に、公然と反中的なヒステリーへと急旋回する好機と捉えた。中国による香港大衆の弾圧を背景に、「国家の破滅」というムードが煽られ、台湾は中国とその現地の手先である国民党によって占領される差し迫った脅威にさらされており、その結果、台湾国民の民主的権利はすべて間もなく攻撃を受けるという印象が与えられた。これに基づき、蔡英文と民進党は世論調査で支持率を回復し、最終的に圧倒的な勝利を収め、大統領職と立法府の完全かつ圧倒的な支配権を獲得した。

もちろん、これは古い手口だ。台湾労働者階級の生活条件に対する長年の攻撃が民進党への広範な憎悪を招いた後、蔡氏は自らの党の犯罪から注意をそらすため、外部からの脅威を指さし始めた。階級矛盾がようやく表面化し始めたこのタイミングで、民進党は国家主義に沿って社会を分断し、台湾民族主義と反中ヒステリーを煽ることに成功した。その結果、中国との統一支持は崩壊した。

中国との軍事衝突を恐れる国民の大半は依然として現状維持を望んでいたが、正式な独立に向けた動きへの支持が高まり始めた。

最近の世論調査によると、現状維持を支持しつつ2018年までに正式な独立を目指すという意見は人口の15.1%を占めていたが、2020年6月までにその数値はほぼ倍増して27.7%に達した。一方、現状維持を支持しつつ中国との統一を目指す層の割合は、12.8%から6.8%に低下し、少なくとも1994年以降で最低の数値となった。

「独立」とは何を意味するのか?

今日の台湾政治における「独立派」とされる陣営、即ち民進党を中心とする勢力は、反中国言説と「台湾の民主主義」への脅威論を基盤としている。彼らは、正式な独立宣言こそが台湾の民主主義の防衛に他ならないと主張する。然しこれは純然たる扇動である。

現実には、台湾は名目を除けば完全に独立した主権国家である。少なくとも、資本主義体制下で小国が得られ得る「独立」の限界の範囲内ではそうである。台湾国家は独自に法を定め執行し、他国との関係を樹立し、世界の殆ど全ての国で受け入れられている台湾旅券を発給し、台湾企業は世界市場で自由に活動している。

現状と将来の正式な独立宣言との間の相違は、西側諸国が主導する国際連合や国際通貨基金等の国際機関への加盟資格、及び中国の影響圏外にある諸国家との正式外交関係樹立にほぼ尽きるであろう。しかし、これらの変化は、台湾の労働者・青年の生活を本質的に改善するものではない。

従って、台湾「自由主義者」が「反中国」あるいは「親独立」の立場を取る時、実際には「親米」「親西側」である事を意味する。これは台湾の「独立」を強化するものではなく、合衆国及び西欧諸国の銀行・大企業への従属を一層深めるものである。

米帝国主義は台湾国民を含む世界中の労働者・貧困層の敵である。マルクス主義者の義務は、そのレトリックの背後に潜む階級的利害を暴露し、労働者階級の間に如何なる幻想も抱かせない事である。

虚偽の二者択一と階級闘争

米中対立が激化するにつれ、台湾の民族問題は益々鋭い形で提起されるであろう。しかし、マルクス主義者の任務は、何よりもまず諸陣営の背後にある階級的利害を晒す事である。

民進党は国民に対し「中国に対抗して団結せよ」と呼び掛ける。「我々か、さもなくば彼らか」である、と。民進党及び台湾基進等の周辺民族主義政党は、このヒステリックな論理を極端な水準にまで高めており、政権に対する如何なる批判、特に労働者の闘争をも「中国の手先」「中共同路人」として誹謗中傷する。

然しこれは、マルクス主義者が断固として拒否すべき虚偽の二者択一である。労働者階級と資本家階級、即ち被搾取階級と搾取者との間には、国籍の如何を問わず、本質的な利害の一致は存在しない。

台湾の労働者と貧困層が直面する諸問題は、「独立」の有無とは無関係である。生活水準の悪化、労働強度の増大、緊縮政策、腐敗は、中国政府によってではなく、台湾の資本家階級によって強要されている。そして現在、その筆頭代表こそ民進党である。民進党が要求しているのは、労働者階級が自らの階級的利害を放棄し、支配階級の利害に従属する事である。

この悪循環から真に脱却したいのであれば、台湾の労働者階級は台湾の資本家階級を打倒し、社会主義的変革に着手しなければならない。

その為に必要なのは、民族的一体性ではなく、革命的階級闘争である。反中国ヒステリーに対し、我々は「主要な敵は自国に在り」と掲げる。台湾の労働家階級の第一の敵は、現在民進党によって代表されている台湾の資本家階級である。

台湾資本主義に対する闘争は、台湾民族主義との闘争と切り離し得ない。台湾民族主義は、もはや台湾国民にとって如何なる進歩的役割も果たさず、労働者解放の直接的障害となっている。支配階級と闘う為には、マルクス主義者と革命家は台湾民族主義の反動的性格を徹底的に暴露しなければならない。

香港の経験

マルクスとエンゲルスが『共産党宣言』で述べたように、労働者階級に祖国はない。台湾人、中国人、日本人、韓国人の労働者たちは、自国の支配階級よりも互いに共通点が多い。マルクス主義者は、あらゆる国家の労働者が国際協力のもとで平和的に共存できる、国境のない世界のために闘う。

支配階級は労働者階級を民族的境界線で分断することで利益を得る一方、我々は常に世界の全労働者間の最高レベルの団結を築こうと努める。そのような団結なくして社会主義革命の成功は究極的に不可能である。

台湾はその典型例だ。資本主義中国に隣接する台湾社会主義の島が長期的に存続できるという考えは、純然たるユートピアに過ぎない。仮に台湾で社会主義革命が起これば、中国国家は(おそらく米国の支援を得て)自国領内への波及を阻止すべく、極限の残虐さで対応するだろう。

さらに、台湾のIMT(The Spark)が過去に掲載した記事で説明した通り、台湾と中国は文化・言語・地理的に極めて近接しているため、台湾海峡を挟んだ両岸の階級闘争は必然的に密接に結びついている。

したがって、台湾資本主義との闘いの任務は、中国資本主義との闘いの任務と直接的に結びついている。しかし、そのような闘いは階級的基盤の上にのみ展開しうる。独立したプロレタリアートの立場がなければ、あらゆる道は反動的ナショナリズムの道へと至り、それはまったく何も解決しない。ここには2019年の香港運動から得られる非常に貴重な教訓がある。

その運動の初期段階では、香港の街頭に100万人以上が繰り出し、ゼネストの気運が広がる中、中国共産党政権は衝撃状態に陥った。彼らが何よりも恐れたのは、香港革命が中国労働者階級内部に高まりつつある怒りと不満の気運と結びつくことだった。実際、多くの中国人労働者や急進的な若者はこの運動に共感の眼差しを向けていた。

しかしジョシュア・ワンらリベラル派指導者たちは、運動を反動的な反中国方向へ導きつつ、同時に西側諸国に支援を訴えた。ワンらリベラル派代表団は米国を訪問し、中国への経済制裁を要求した。このような動きは、中国本土の大衆から米国帝国主義による中国への攻撃と正しく認識されるだろう。それは労働者や貧困層の生活にも深刻な打撃を与える攻撃である。

香港自治運動は、中国の労働者階級とのいかなる形の団結にも関心を示さず、米国旗を掲げた大規模な集会を開催し、トランプ政権の支援を懇願した。これらの要素は、明らかに反中国的な方針を推進し、民主的権利の要求(そうでなければ中国で非常に人気があったであろう要求)を、旧英国植民地時代のノスタルジアや米国帝国主義と結びつけた。実際、彼らの戦略は、ドナルド・トランプに奉仕し、この運動を中国に対する米国帝国主義の代理人へと変貌させようという意図に基づくものであった。

しかし、米国と提携することは、運動を強化するどころか、中国共産党政権に有利に働いた。習近平は、この提携を都合よく利用し、中国国民に対して、この運動を帝国主義の陰謀であると印象づけることができたのだ。政治的には、香港の運動は、中国の労働者層から切り離されてしまった。

むしろ、これは国内の中国ナショナリズムを強化するのに役立った。つまり、中国政権が中国国内の階級矛盾を薄め、香港運動の弾圧に労働者階級を結束させる取り組みを助けたのだ。その結果は致命的だった。事実上、ナショナリストで親欧米の香港指導者たちは、運動の敗北の政治的基盤を築いてしまったのだ。

当時説明した通り、運動が決定的な勝利を収める唯一の道は、中国本土の大衆に直接訴えかけることだった。香港の指導者たちが階級的プログラムに基づき、中国の労働者たちに中国支配階級に対する共同闘争への参加を呼びかけていれば、広範な反響を得られたはずだ。

主要な工業拠点である隣接する広東省の労働者から始まり、運動は中国本土へ広がり得た。しかしリベラル派は米英帝国主義に訴え、香港人の利益を中国人との対立関係として提示したことで、本土の労働者階級への道筋を閉ざした。

台湾でも同様の状況に直面している。台湾における社会主義の闘争は、中国における社会主義の闘争から切り離すことはできない。そしてこれは台湾民族主義に対する積極的な闘争を通じてのみ可能となる。台湾の労働者階級が、いかなる形であれ米国帝国主義やその手先である民進党に傾いていると見られてはならない。そうすれば、米国帝国主義を敵と正しく認識している中国労働者から即座に切り離されてしまうからだ。

だからこそ台湾マルクス主義者の第一のスローガンは「米帝国主義にノーを!」でなければならない。これは中国労働者に対し我々が敵ではないという信号となるだけでなく、支配階級の主流派が米帝国主義の代理人である台湾内部の階級的分断を浮き彫りにするだろう。

統一?

台湾ブルジョア政治の対極に位置する国民党は、つい最近まで公然と台湾の中国との統一を訴えてきた。皮肉なことに、かつては中国の変形労働者国家を打倒し全領土を奪還すると誓った中国帝国主義の政党が、今や中国そのものの傀儡と化しているのだ。

しかし香港での事件後の世論の劇的な変化により、国民党は統一への全面的支持を公式にやや控えざるを得なくなった。公の場では一歩引いた姿勢を見せつつも、国民党は台湾のブルジョアジーの中でも中国本土との緊密な統合を求める勢力を代表している。

しかし、これは台湾大衆にとって真の選択肢とは到底言えない。資本主義的基盤での中国との統一は、台湾と台湾労働者階級を中国資本主義の利益に服従させることに他ならない。

それは1990年代に勝ち取った民主的権利の後退を意味する。だからこそ台湾人の大多数がこれに激しく反対しているのだ。そのような統一は、武力によって、彼らの意思に反してのみ実現しうる。しかし、このような基盤の上での統一は、階級闘争の利益に甚大な損害を与えるだろう。それは中国と台湾のナショナリズムを強化し、中国と台湾の労働者の間に深い溝を作り出し、彼らをそれぞれの支配階級の懐へと追いやるだろう。

マルクス主義者としての我々の任務は、台湾、中国、そしてこの地域の他の地域の労働者階級が、ここにいる全ての支配階級に対して団結して闘う旗を掲げることである。台湾のプロレタリアートの任務は、何よりもまず、台湾における社会主義のために闘うことである。もし彼らが成功すれば、それは自国の支配階級の手によって苦しむ数億の労働者と貧しい人々がいるこの地域全体に大きな反響を呼ぶだろう。香港運動において、この可能性の一端を私たちは垣間見た。この運動は中国本土を含む地域内の何百万人もの人々の想像力を捉えたのである。

こうした状況下で、台湾革命は中国労働者に対し、中国共産党国家と中国資本主義に対する闘争に焦点を合わせ、自らの手で権力を掌握する任務に着手するよう呼びかけることに成功しうる。したがって、台湾ナショナリズム、ひいては米国帝国主義との闘いを基盤として、台湾のプロレタリアートは、今日、彼らと中国の労働者の間に煽られている不信感や敵意を克服することができる。これは、地域全体にわたる社会主義のための真に統一された闘争の基礎を築くだろう。

中国のマルクス主義者の課題

中国におけるマルクス主義者の主要な敵は、民進党や蔡英文ではなく、習近平政権、国家官僚機構、資本家階級である。

中国資本主義の危機が深まる中、中国の共産党政権は特に台湾問題を利用して、国粋主義的ヒステリーを煽り立て、国内の階級矛盾を覆い隠そうとしている。中国のマルクス主義者は台湾の同志と同様、「主要な敵は自国に在り」というスローガンを掲げなければならない。

中国のマルクス主義者の第一の任務は、中国の覇権主義と漢民族排外主義の反動的本質を晒す事である。彼らは中国共産党政権による台湾への領有権主張、威嚇、干渉の一切に反対しなければならない。その理由は、台湾民族主義を支持する為ではなく、台湾の労働者に対して中国の労働者が彼らの敵ではない事を示し、台湾民族主義の基盤を掘り崩す為である。

習近平と蔡英文、そして双方の支配階級は、互いに相手を利用して民族主義的高揚を構築している。習は蔡の対米接近を利用して国内民族主義を強化し、蔡は中国の軍事演習や習の強硬発言を用いて「国家的危機感」を煽り、自身への支持を動員している。我々の任務は、この相互依存的ナショナリズムの連鎖を断ち切り、双方の欺瞞を晒す事である。

社会主義と国際主義

資本主義の黎明期において、国民国家の形成は市場の統一と産業発展を通じて、労働者階級の成長を促進した。しかし今日、国民国家は生産力発展の巨大な桎梏となっている。

資本主義の危機の深刻化に伴い、国家間緊張は高まり、結果として世界的な不安定化が進行している。米中貿易戦争、ロシアのウクライナ侵攻と西側との戦争、欧州連合における危機やブレグジット等は、全て同一過程の表現である。

第二次世界大戦後の長期的成長を支えた世界貿易の拡大は、急速に逆転しつつある。その帰結はインフレーションの高進と、一層脆弱な成長と深刻な危機の時代への突入である。

これは自己強化的な悪循環であり、今後数年から数十年に亘り、如何なる国家もその影響を免れ得ない。近年比較的安定して来た東アジアも例外ではない。

科学技術は既に、飢餓・疾病・貧困等の主要問題を比較的容易に解決し得る水準に達しているにも拘わらず、数十億の人々が不要な苦痛に晒され続けている。

この混迷の只中にあって、マルクス主義者の任務は常に階級問題を前面に押し出し、如何なる反動的民族主義にも妥協無く反対する事である。唯それによってのみ、労働者階級を歴史的使命へと高める準備が整えられる。即ち、社会主義革命と、諸民族が互いに平等かつ友好の下に、自らの進路を協議し決定し得る社会主義的連邦の樹立である。

社会主義革命と、調和のうちに自らの未来の道を共同で決定する諸民族による社会主義連邦の樹立を。

台湾民族主義に反対する!主要な敵は自国の支配階級である!

米帝国主義に断固反対する!

資本主義の枠組みにおける中国との「統一」に反対する!

東アジア社会主義連邦内の民主的社会主義台湾を!