中国は世界有数の工業大国として躍進を遂げている。中国で新たな技術革新が生まれたというニュースは、今や連日の事である。
僅か20年前まで後進性に囚われていたこの国は、今やアメリカとの熾烈な競争に身を投じ、それに持ち堪えている。他方、地球上で圧倒的な最強勢力であるアメリカ帝国主義は、矛盾の網に絡まり、行き詰まりに陥っている。
この対立は今や、世界情勢を動かす主軸となっている。
中国経済は如何にしてこのような状況に到達したのか。そして、これは世界資本主義の危機にとって何を意味するのかを探る。
紛れも無い上昇
世界経済が停滞する中にあっても、中国のGDP成長率は近年概ね5%前後で推移している。これは、日本の約三倍の規模を持つ経済にとって、絶対額で見れば極めて大きな成長である。更に重要なのは、この成長率が旧帝国主義諸国を遥かに上回っている事である。アメリカは2.8%の成長率を維持している一方、EUは産業の衰退により、僅か0.1%の成長率にとどまっている。
金融資本の支配の下で産業が痩せ細り、衰退してしまった多くの旧帝国主義諸国とは対照的に、中国の工業部門はいまだ活況を呈し、既に世界規模で君臨している。『エコノミスト』誌によれば、中国は単独で世界の製造業の30%を占めており、その規模はアメリカ、ドイツ、日本、韓国を合計したものをも上回る。中国の付加価値工業生産、すなわち産業が創出する新たな価値は、年間概ね5〜6%のペースで増加を続けており、その勢いが衰える兆しは見え無い。
嘗て中国が低品質の衣料品、玩具、日用品しか生産していなかった時代は終わった。「Made in China」という言葉は、今や世界最先端のテクノロジー製品と結び付けられている。2020年以降、中国はコンピューター、電子機器、化学製品、機械設備、自動車、基礎金属、金属加工品、電気機器の生産において世界のリーダーとなった。
更に、中国は研究とイノベーションの強国となった。Nature Indexによれば、現在、世界トップ10の研究機関の内の7つが中国に所在している。ロボット工学の分野では、特許出願数(その三分の二は中国による)とロボット導入台数の双方で中国が圧倒的なシェアを占め、世界の他の国々を合わせた数をも上回っている。「ダークファクトリー」と呼ばれる、ほぼ完全にロボット化された工場は、照明を必要とし無い程の少数の労働者しか雇用せず、多くの製造分野で導入が進んでいる。
半導体産業のように、アメリカからの激しい圧力によって技術向上が阻害されている分野でさえ、中国の自給率は急速に高まり続けている。この分野における最先端技術へのアクセスを中国から遮断しようとするアメリカの試みは、むしろ中国が高度なマイクロチップ製造に代わる最先端技術を開発する上で、有利に作用しているのである。
これらのイノベーションの多くは消費財に応用されているが、軍事用途への転用も急速に進んでいる。中国は、水中を遊泳し空中を飛行出来るドローン、大型水中ドローン、そして汎ゆる軍艦を空母として機能させ得るジェット推進式ドローンなど、枚挙に暇が無いほどの軍事技術を開発している。これらの開発は、西側諸国における中国の競争相手に屈辱と恐怖を与えている。
状況は極めて明瞭である。中国は巨大な発展を遂げ、多くの分野でアメリカの優位性に挑戦している。中国はとうの昔に外国投資への依存と低付加価値製造業への依存を脱し、強大な帝国主義国家へと変貌したのである。これは如何にして達成されたのか。この発展は矛盾無く継続し得るのか。
「後進性の特権」
中国の驚異的な進歩を説明する重要な要素は、その出発点に求められる。
古典的な資本主義国が、長年にわたり蓄積して来た矛盾、非効率、債務、その他生産力にまつわる諸問題を抱えているのに対し、中国が世界資本主義市場に本格参入した時期の中国は、西側諸国と比較すれば後進国であった(一定の産業基盤は有していたが)。ハイテク産業は存在せず、ほぼゼロから構築する必要があった。
しかし中国は、完全な白紙から産業を発展させる必要はなかった。幕開けの段階から、世界中で利用可能な最先端技術を導入し得たからである。
これは、トロツキーが嘗てロシアで観察し、「世界システムとしての資本主義の不均等かつ複合的発展」と呼んだ現象の一部である。
歴史的後進性という特権(たしかにそのような特権は存在する)は、ある時点までに準備された所産を、一連の中間段階を飛び越えて採用する事を許し、あるいはむしろ強制する。未開人は弓矢から一挙にライフルに飛躍し、嘗てその武器の間に存在した段階を辿る事は無い。アメリカ大陸に移住したヨーロッパ人植民者は、歴史を最初からやり直した訳ではなかった。ドイツとアメリカ合衆国が現在経済的にイギリスを凌駕している事実は、まさにその資本主義的発展の後進性によって可能になったのである。他方、イギリスの石炭産業における保守的無政府状態(マクドナルドとその仲間たちの頭の中にあるものと同様である)は、イギリスがあまりにも長く資本主義の先駆者として振る舞って来た過去への代償である。歴史的に後進的な国家の発展は、必然的に歴史過程における各段階の奇妙な組み合わせをもたらす。そしてその全体は、無計画で複雑、かつ複合的な性格を帯びる事になる。
現在中国第三の都市である深圳は、この変貌を最も端的に示す例である。1980年当時、同地は人口三万人ほどの小さな漁村に過ぎなかった。資本主義の復辟への第一歩として中国初の「経済特区」に指定され、1990年代半ばには通信機器の拠点へと急速に成長し、2000年代初頭には欧米ブランドの携帯電話を大量生産する「世界の工場」となった。
政府の意図的介入により、深圳は巨額の投資と熟練労働者を引き付け、ハイテク産業への高度化を可能にした。現在では「中国のシリコンバレー」と称されている。これら全てが、僅か40年の間に起来た事である。
中国が後発国優位、いわゆる「後進性の特権」の恩恵を享受して来た例は枚挙に暇が無い。中国が独自に運営する天宮宇宙ステーションは、現在稼働している二つの宇宙ステーションの一つであり、アメリカとロシアの宇宙計画から得られた最新の研究と教訓を活用して建設された。中国の情報通信技術、高速鉄道、希土類鉱物の精錬などの分野でも、同様の飛躍的進歩が観察される。
中国はこの優位性を十分に認識し、活用している。国営シンクタンクである中国発展研究院の樊綱所長は、次のように明快に述べている。
「わが国は毎年300億ドル以上を知的財産権やライセンス権の取得に投じ、保護されてい無い知識を貪欲に学び、模倣している。後発国である日本も嘗てそうであったように、そうした知識に迅速かつ安価にアクセス出来るのである。そして模倣は決して恥ずべき事では無い。」
しかし、この「後進性の特権」だけでは、中国の継続的成功を説明し尽くす事は到底出来ない。世界には、後進性に囚われたままそこから抜け出せ無い国家が数多く存在する。中国がその罠から脱する事が出来たもう一つの重要な要素は、中国共産党国家の役割にある。
ボナパルティスト国家の役割
中国は中国共産党による一党独裁体制を敷いている。国家は資本主義を堅持し、労働者階級を抑圧しつつ、市場に強力に介入し、ブルジョワジーを統制し、その行動と資本投資を指導している。
党=国家は経済の主要な部門の一部を掌握している。多くの資本主義国と異なり、中央銀行の金融政策と財政政策は党の指揮下にある。また国家は、国内最大の商業銀行(その内の四行は世界最大級)に対して過半の株式を保有し、株主の短期利益に先立って国家政策に沿って資本を配分する事を可能にしている。更に国家は経済の発展目標を設定し、民間ブルジョアジー(国家によって所有または管理されてい無い企業を所有する資本家)に対し、補助金や規制を通じて従属を強制している。
システムの安定性を脅かす行動をとる資本家は、素早く抑え込まれる。たとえば、アリババのCEOであるジャック・マーが、リスクの高い金融ベンチャー企業アント・グループ(投資家から340億ドルという巨額の資金を調達)を立ち上げようとした際、政府は直ちに介入し、上場計画を中止させ、彼を一時的事実上の亡命状態に追い込んだ。当局は、アント・グループが2008年のような危機を引き起こした欧米の大手金融企業に見られた、多くの疑わしい金融スキームや無謀な経営慣行をなぞっていると判断した。またマーは、中国社会における極端な不平等の象徴となりつつあった。当局は、リスクが拡大する前に早期に対処する道を選んだのである。
ジャック・マー個人の行動も、中国共産党を動かす一因となった。アント・グループの上場準備の過程で、マーは金融セクターへの規制が過度に厳格であると公然と批判した。彼の著名さと富を考えれば、このような公的発言は中国共産党の権威への露骨な挑戦に等しく、たとえ彼が中国共産党員であったとしても、罰を免れる事はあり得なかった。また、既に傲慢で露骨に金持ちであるとして広く嫌われていたマーを懲罰する事は、中国共産党にとって大衆的支持を獲得する好機でもあった。
資本家個人に対するこの種の懲罰は、決して単発の出来事では無い。マーが鞭打たれたのと同じ年、中国共産党は複数の中国企業に対し、総額数百億ドルに及ぶ罰金を科した。その結果、株価は急落し、投資家は一兆ドルを超える損失を被った。国営メディア『環球時報』によれば、2024年には科された罰金総額は15.2億ドルに増加した。更に、破産を宣告した資本家は将来の信用融資のブラックリストに載せられ、贅沢支出を禁じられている。
富裕層が政治家の懐を握っている西側諸国では、一般にブルジョワジーが国家を支配し、いわゆる「法の支配」が遵守され、資本家が見せしめにされる危険はほとんど無い。彼らの財産は厚く保護され、政府を批判しても身を隠す必要は無い。実際、多くの場合、資本家階級の意向に従わされるのは政治家の側である。
イーロン・マスクとジャック・マーの比較は示唆に富む。両者とも、自らの意見を世界に発信せずにはいられ無い誇大妄想的なテクノロジー業界の億万長者である。しかし彼らが直面した帰結は著しく異なる。マスクは政治的影響力を購入し、アメリカ大統領と衝突する事はあっても、富と政府との契約を維持して来た。一方マーは、中国共産党によって長年公の場から退けられ、ビジネス帝国のかなりの部分を失った。
中国共産党政権は、厳しい懲罰に加え、市場を特定の方向へ誘導する為に「アメとムチ」の手法も用いている。政府が優遇する産業には、巨額の補助金、減税、その他の優遇措置が与えられる。こうした産業はしばしば、地方政府との官民合弁企業として運営される。また政府は党幹部と党組織を、とりわけ「業界のリーダー」と見なされる民間企業の内部にまで派遣し、国家政策に沿った行動を徹底させる。
このようにして政府は、特に金融セクターのようなリスクの高く非生産的な分野への資本流入を抑制しようとしている。欧米諸国では、自社株買いであれ次々と現れる仮想通貨ブームであれ、巨額の資金が投機に流れ込むが、中国は2017年、当時世界最大の仮想通貨市場であったにもかかわらず、国内での仮想通貨のマイニングと取引を禁止した。
中国政府は、より直接的なブルジョワ的利益から相対的に独立しているが故に、不況や危機の芽を緩和する為の手段を多く保持している。恒大集団のデフォルト危機も、そのように対処された事例である。
恒大の債務不履行が表面化すると直ちに、政府は危機収拾の為の不透明な委員会を設置した。国有企業と複数の民間企業が動員され、恒大の債務の一部を肩代わりし、未完のプロジェクトを引き継いで完成させた。同時に、同社CEOである許家印の数億ドル相当の資産は凍結された。こうして問題はなお継続し、中国の不動産セクターは引き続き経済に下押し圧力をかけているものの、本格的な総崩れは回避された。
対照的に、リーマン・ブラザーズが長年にわたるリスクの高い慣行の末に行き詰まった際、アメリカ政府はその破綻を阻止出来ず、世界経済は崩壊した。だがその後、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、ドミノ倒しを防ぐ為に他の企業を救済すべく、数千億ドル規模の公的資金を投入せざるを得なかった。他方、リーマン・ブラザーズのCEOは数億ドルに上る給与とボーナスを手にしたのである。
中国国家はまた、不動産投資から製造業投資へと資本を誘導する政策も採用して来た。これは経済を高リスク分野から遠ざける為である。
しかし、ブルジョワジーに規律を強いる事は中国政府の統治の一面に過ぎない。中国政府は何よりも、労働者階級の抑圧に最大の関心を払っている。
中国は大衆に真の民主的権利を与えた事が無く、近年は統制を一層強めている。オンライン検閲は至る所に存在し、監視技術の高度化によって常に強化されている。もちろん、国家の公式労働組合組織の外で独立した労働組合を組織しようとする試みは、容赦無く弾圧される。
真の労働者組織が存在し無い為、ダークファクトリーのように労働者の雇用を根底から脅かすプロジェクトであっても、ほとんど異議を受ける事無く推し進められ得る状況にある。
もっとも国家は、システム全体の安定性を維持する為に、階級分断の反対側である労働者の不満を抑える必要もある。時に国家は、労働者と経営者との争いに介入し、動揺の高まりを未然に防ぐ。近年、国家が最低賃金の引き上げを進めて来た背景には、デフレ対策としての消費拡大以上に、階級的怒りを和らげようとする意図が見られる。
中国共産党が以上のような役割を果たし得たのは、同党が資本主義の復辟以前から既に強大で、津々浦々まで浸透した警察国家機構を有していたからである。ソ連共産党とは異なり、中国共産党は資本主義の復辟のプロセスを厳しく管理した結果、ソ連が崩壊したのとは対照的に、資本主義の復辟の下でも中国社会における強力な地位を維持し続けた。
中国が計画経済から市場原理、利潤追求、私有財産が支配する経済へと転換する過程で、中国共産党は銀行と特定の戦略産業を中心に、経済の主要な担い手を国家の管理下にとどめた。外国投資は歓迎されたが、企業の完全所有権は認められなかった。
国家官僚機構は、一方では自らの権力が外国帝国主義者や国内ブルジョアジーの一部に奪われる事を容認し無い。他方では、資本主義システム全体の為に労働者階級を抑圧する必要があり、したがって労働者階級にブルジョア民主主義的権利、たとえば独立した労働組合を結成する権利などを与える事にも反対している。
中国共産党官僚機構は、既存システム全体を維持する為に、ブルジョワ階級と労働者階級の間で恒常的にバランスをとらざるを得ない。マルクス主義ではこれを「ボナパルティズム」と呼び、国家がいずれの階級よりも優位に立ち、警察的手段を通じて直接統治を行う体制を指す。
もっとも中国国家におけるボナパルティズムには、極めて特殊な起源と特徴がある。マルクスによる古典的ボナパルティズム概念は、階級闘争が膠着した国々に適用される。それは、「強者」が登場し、国家の抑圧力を強化する事で秩序の回復を申し出るが、その過程で支配階級から一定の独立性を獲得するというシナリオである。しかし最終的に、その秩序の回復は支配階級の利益に奉仕する。
今日の中国におけるボナパルティズム体制は、階級闘争の行き詰まりから生じたものでは無い。それは、嘗て計画経済の果実を吸い上げ、後に資本主義の復辟を主導し、自らの特権と利益を資本主義の上に築き上げた官僚機構から生じたものである。労働者の政治的自由を継続的に抑圧する事無くして、このような事は不可能であった。同時に、この体制は国家に依存する資本家層を生み出した。
市場に大きく介入し、資本家階級の行動を規律し得るボナパルティスト国家の存在は、中国経済の「若さ」と相まって、中国に西側諸国に対する大きな競争上の優位を与えて来たのである。
「アポロ・スピリット」
中国共産党は社会における影響力を活用し、国家規模で研究開発プロジェクトを主導し、驚くべきスピードでそれを調整する事が出来る。そのやり方は皮肉にも、宇宙開発競争期のアメリカが自国の事業を組織した方式と大差無い。
ハーバード大学のブルーノ・セルジ教授が『ザ・ディプロマット』誌において指摘したように、NASAによるアポロ計画成功の決定的要因は自由市場競争では無く、中央集権的な国家主導であった。NASAは研究、開発、製造、運用という一貫したプロセスを統括し、民間企業は主に国家の指示に従属していたのである。
AI開発競争において、中国も同様の動きを見せている。セルジは次のように説明する。
「国務院が2017年に『次世代人工知能開発計画』を策定して以来、北京は2030年までに世界をリードするという明確なマイルストーンを設定し、研究機関、大学プログラム、工業団地に対する大規模投資を背景に、着実に歩を進めている。中国の大学は応用研究開発に深く関与し、特許を取得し、百度、アリババ、テンセント、ファーウェイといったテクノロジー大手と連携して画期的成果を商業化している。中国は、西側諸国の羨望を集めるスピードで、大規模施設、データセンター、効率的な承認プロセスを整備しつつある。」
中国はボトルネックとなる問題にも備えている。国内チップ製造を加速させる事で、先進的半導体に対するアメリカの輸出規制から自国を守ろうとしているのである。ファーウェイは新型AIチップとAscendプロセッサーの生産を先導し、主にSMICを通じて専用製造とスケール拡大を図っている。アリババと百度もまた、輸入依存を減らすべく、国産AIアクセラレーターを開発している。
しかし国家による協調的指導の精神は、AI分野を遥かに超えて広がっている。2015年に初めて打ち出された「中国製造2025」構想において、中国政府は自国産業の技術競争力と自立性の向上を目標に、積極的投資と組織的取り組みを行うべき技術分野を明確に特定した。2024年時点で「中国製造2025」の目標の86%以上が達成されたとされ、その成果は上述した各分野に明瞭に現れている。
これら全ては、一つの根本的事実を浮き彫りにしている。自由市場の伝道者たちの主張とは反対に、今日の生産力向上に不可欠な膨大な分業と巨大な事業規模を考慮すれば、中央集権的な国家介入は技術革新の推進において市場より遥かに優れているのである。中国共産党は現在、この能力をAI開発において資本主義大国としての自国の利益の為に行使し、西側諸国と真正面から競合しつつ、疑い無く急速な前進を遂げている。
これは計画経済か
今日の中国政府が、具体的な経済目標を設定し、それを達成する為に経済を誘導し得る能力を備えている事は明らかである。そこには一定程度の「計画性」が存在している事は疑い無い。
この事実と、中国の経済体制を「資本主義」では無く「中国の特色ある社会主義」と規定している事実、そして与党が形式上いまだ共産党であるという事実を踏まえるならば、今日の中国は計画経済なのかという疑問が当然生じるであろう。
国有化された計画経済においては、経済活動を駆動する力は資本主義とは根本的に異なる。産業の主要部門は国有化され、生産は利潤追求では無く、社会全体のニーズに直接応える具体的計画に基づいて組織される。
このような体制では、過剰生産危機や好況と不況の循環を伴う無秩序な市場は存在し無いはずである。もちろん、健全な計画経済を維持するには、無駄、不適切な管理、腐敗を防ぐ為に、労働者による統制というチェックが不可欠である。
中国は嘗て、国有化された計画経済を持っていたが、労働者階級にとっての民主主義が欠如し、官僚機構に支配されていた。この計画経済は中国にもたらされた莫大な利益を通じて、中国を帝国主義支配と後進性から解放し、近代化への道を開いた。
しかしその後数10年の間に、嘗ての計画経済の多くの特徴は、中国共産党自身の手で解体された。雇用、住宅、社会福祉の保障は今や過去の記憶となった。経済の重要な部門の一部が依然として国有化されているなど、過去の痕跡は残っているものの、国有企業を含む中国経済の汎ゆる構成部分は、社会のニーズを満たす為では無く、主として利潤と市場シェアの追求を目的として運営されている。
「中国製造2025」のような産業計画は、中国製品が世界市場において他国の資本主義企業の製品より多く売れるようにする事を目的とした計画である。ここに根本問題がある。国家による強力な介入があるとしても、経済の機能を最終的に決定しているのは、資本主義経済の二つの基本的柱である市場圧力と収益性なのである。
国家は資本家にインセンティブを与え、規律し、時に特定技術の直接開発を通じて経済を自らの目標へと導き得る。しかし市場経済の力学は常に、国家が意図する成果を損ない、歪める方向に作用している。典型的には、国家が優遇する分野への投資が殺到し、その分野で過剰生産とデフレをもたらす形で現れる。
こうした結果はあまりに広範である為、「内巻き(インボリューション)」という特別な語が広く使われるようになり、習近平自身もこの語を引用している。これは、優遇分野における過度な競争が生む望ましく無い影響を指し、単に採算ラインを維持し、競合他社に追い付く事さえ極めて困難になる事態を意味する。
これらの分野には莫大な資本が流入する為、生産性の高い企業でさえ、競合他社が全く同じ事をしているが故に、市場シェアを獲得出来ないという状況に直面する。その結果、価格競争が激化し、長時間労働と過剰な過剰生産が蔓延する。この傾向は、中国が近年世界をリードする技術革新を推進している事によって、今後一層強まるであろう。
最も顕著な例が電気自動車の過剰生産である。近年の政府の政策と補助金によって、巨大な生産能力を有する少数の電気自動車ブランドが急速に育成され、その結果、市場には電気自動車が溢れ返っている。これらの車両を売り捌こうとする衝動が、無秩序な価格競争を引き起こし、多くの企業は赤字経営を強いられ、国家支援への依存度は下がるどころか高まっている。このようにして政府は、自らの成功の犠牲者となっているのである。
もしこれが国有化された計画経済であれば、これらの産業は即座に再編され、社会の他のニーズに応える役割を担うよう転換し得たはずである。たとえば、こうした工場は容易に改組し得て、中国の最貧地域が必要とする電子機器やコンピューター製品を低コストもしくは無償で生産し、巨大な地域格差を是正する事が出来たであろう。
しかし現実に政府が取り得る手段は、地方自治体の補助金政策を規制し、一部企業の破綻を容認する事に限られている。これは迅速なプロセスからは程遠く、強力な機構を備えた中央政府にとってさえ実行は困難である。
自動車メーカー各社は値下げ合戦を抑制しつつ販売拡大を続けようとし、無利子ローンや無料携帯データ通信など、国家の命令を迂回する様々な手段を次々と編み出している。中国自動車販売協会は、中国共産党が望ましい結果を得るには長期戦を覚悟しなければなら無いと述べている。
これらは全て、資本主義発展の自然な一部であり、ここに「中国的」特異性は何も無い。マルクスとエンゲルスは、高い利益率を誇る新興産業が投資によってあふれ返り、その結果利益率が押し下げられ、危機を生む様を広範に分析している。これはやがて倒産を招き、少数の独占企業による産業集中へとつながる。レーニンは『帝国主義論』の中で、当時のイギリス帝国主義について次のように記している。
「集中によって形成された巨大企業に追い付こうとする汎ゆる新企業は、膨大な量の余剰商品を生産する。その為、それらを処分しようとする場合、需要の急増に乗じて利益を上げつつ売る事によってのみ可能である。さもなければ、その余剰が価格を、新企業にとっても独占企業にとっても利益を生ま無い水準にまで押し下げてしまうであろう。」
この言葉は、今日の資本主義中国にそのまま当てはまる。
結局の所、経済システムが無秩序な市場、利潤追求の為の生産、国民国家、私有財産を土台としている限り、如何なる国家規制も過剰生産危機という必然的帰結を防ぐ事は出来ない。そして今やそれは中国においても、あまりにも明白になりつつある。中国共産党はこの根本的矛盾に対する解決策も計画も持ち合わせてい無い。
資本主義の限界
国家主導による目覚ましい成長にもかかわらず、中国でも多くの先進資本主義国と同様に成長率は鈍化している。
不動産が中国経済において巨大な比重を占める中、恒大危機は経済減速の主要因となった。政府介入によって2008年金融危機規模の崩壊は回避されたものの、恒大の債務不履行問題は依然解決されておらず、仮に解決するとしても数年を要するであろう。
同様に、政府は価格競争の制御を試みているが、民間企業とその背後にいる地方政府は、短期的利益と自らの富を守る為、汎ゆる手段で政策を回避し続けている。
計画経済で無い限り、市場の無秩序な動きから生じる問題に対して、単純かつ迅速な解決策は存在し無い。
また世界の他の汎ゆる資本主義経済と同じく、中国でも公的・私的部門を問わず巨額の債務が蓄積している。とりわけ2024年後半、中国政府は消費と金融市場を刺激する為、大規模な財政出動を余儀無くされ、その結果国家債務の負担は更に増大した。
一般大衆にとって、生活費と失業率(特に新卒者)は着実に上昇している。中国が急速な高齢化に直面している事を踏まえれば、若者世代の負担は特に深刻であり、高齢の家族の介護の重荷が若年層の肩にのしかかっている。
社会保険(社保)や医療保険(医保)といった社会保障制度は、保険料納付が困難になる人々の増加によって逼迫している。退職年齢の引き上げなど典型的な緊縮措置は、現時点では比較的緩やかな形ではあるが、既に導入されている。
中国の現在の緊縮規模を西側諸国のそれと単純に同一視するのは誤りである。中国はまだこのプロセスの初期段階にある。他方、西側の支配階級は20年以上にわたり労働者への攻撃を継続しており、その流れが逆転する兆しは見え無い。しかし中国もまた、同じ道筋に踏み出しつつある。それは資本主義の必然的な帰結であり、如何に強大な国家であっても逃れる事は出来ない。
こうした状況の根底には、巨大な過剰生産という深刻な問題がある。産業全体の稼働率は現在74%であり、2020年以来の最低水準となっている。特に電気自動車産業では、2024年の稼働率は僅か49.5%であった。その結果、収益性は低下し、赤字企業の割合は2016年の約10%から2024年には約20%にまで増加している。
上述の通り、国内の過剰生産は持続的なデフレと収益性低下を引き起こしている。最終的に中国は、既に現れ始めている傾向として、自国製品を世界市場に大量に投下するか、それが不可能な場合には価格競争で疲弊した企業の大量倒産に直面し、数百万規模の雇用が脅かされるか、という選択を迫られる事になるであろう。
階級闘争の展望
中国経済、特に工業部門のダイナミズムは、混乱の中で世界覇権を守ろうとするアメリカ経済や、明らかに衰退しつつあるヨーロッパ経済との間に際立った対照を成している。
中国の生産力の目覚ましい発展は、中国共産党の指導の下で人々の生活が着実に改善されているという印象を大衆に与えている事は疑い無い。実際、国営メディアは、西側諸国の労働者階級の生活が悪化している実態を、ほとんど誇張や歪曲を加えずに報道する事で、この印象を一層強めている。
バイデン政権およびトランプ政権の下で近年激化しているアメリカの対中強硬姿勢は、中国人民に西側帝国主義によって国土を分割・支配された屈辱の歴史を想起させている。その結果、反帝国主義・反西側感情が自発的に高まり、それが中国共産党にとって国家主義的プロパガンダを煽り、自らの支持を強化する格好の機会となっている。
では、このような状況は中国における階級意識に如何なる影響を及ぼしているのか。過去30年間、中国は劇的な変貌を遂げ、数億人の人々の生活は大きく変化した。一世代の内に、多くの人々が村の貧しい農民から近代都市の工業労働者へと転身し、生活水準は大きく向上し、子ども世代には更に良い未来を期待している。加えて中国は国際舞台で強い存在感を示し、ライバル諸国に対して圧倒的な力を誇示している。
中国共産党に対して憤りや批判を抱く者は存在するにせよ、少なくとも体制が機能しているように見える限り、持続的な経済成長と西側からの敵意という認識は、革命的衝動を抑制する要因として作用し得る。
しかし階級闘争は決して直線的に発展するものでは無く、経済的繁栄と機械的に反比例する訳でも無い。多くの場合、ある程度の経済成長は、労働者階級が自らの利害の為に闘う自信を高める。
上述したように、中国資本主義社会には依然として多くの矛盾があり、それらは時折表面化せざるを得ない。今年初め、BYDが世界の電気自動車市場で優位を確立する中、中国国内では数千人規模のBYD労働者が賃下げに抗議して激しい闘争を展開した。
更に、一月の陝西省蒲城市や八月の四川省江油市で見られたように、学校でのいじめに対する地方官僚の不適切な対応に憤った数千人が抗議に立ち上がり、やがて民主的権利を求めるより広範なデモへと発展した事例は、草の根からの動揺が依然として極めて生き生きとしており、自らの運命を握りたいという大衆の願望と官僚独裁への反発を如実に物語っている。
衰退する世界の中での台頭
中国は多くの側面で明らかに躍進しており、世界市場を巡る争いの中で、次々とアメリカの優位を侵食しつつある。現時点ではアメリカに取って代わる事には程遠いにせよ、中国は多くの点で、西側諸国よりも資本主義を器用に運用する術を身に付けている。
しかしながら、中国資本主義の台頭は、世界資本主義が史上最も深刻な危機に直面している只中で進行している。中国は世界危機やアメリカ帝国主義との競争から自国をある程度防御し得るとしても、世界資本主義の危機一般から完全に離脱する事は出来ない。国外の不況は不可避的に中国にも重大な影響を及ぼす。また中国は、国内の過剰生産危機から無期限に逃れ続ける事も出来ない。
とりわけ経済発展と共に飛躍的に強化された中国プロレタリアートは、世界の舞台において比類なき地位を占めている。遅かれ早かれ、世界は中国の技術的躍進に対して今日抱いている驚嘆以上に、中国労働者階級の運動に対して驚愕する事になるであろう。
